まだブロガーで消耗してるの?

彼「動画がいいのでしょうか?」

私「うーん。なぜネットで稼ぎたいのですか?」

彼「やっぱり好きなことだけで、生きていきたいからですかね」

私「はぁ。そうですか……」

ブロガーである彼のツイッターのフォロワー数は多く、いわゆる「ネット有名人」です。KOMUGIの「相談する」のコーナーを見てご連絡をいただきました。「好きなことで、生きていく」って、ユーチューバー(YouTuber)のCMを真に受けすぎだろ!とツッコミたくなりますが、そこはグッとこらえて丁寧にアドバイスさせていただきました。この記事を読んでいたら、ごめんなさい。

「ネットで稼ぐ」ことを夢見る人は、けっこうたくさんいるようです。私のところにも「セルフブランディングしたい」という問い合わせをいただいて、けっこう困ってます。ネットで稼ぐつもりがない私がアドバイスするのは非常に複雑です。

そんな事情もあり、今回はネット上にいろいろな情報があふれているのに、なかなかつかみどころのない「ネットで稼ぐ」を題材にします。

「ネットで稼ぐ」を整理する

「ネットで稼ぐ」と考えたときに、真っ先にみなさんが思いつくのはブロガーです。なぜブロガーなのかを、真剣に考えたことはありますか? きっと曖昧な理由で目指す人も多いと思います。まずは「みんながブロガーを目指す謎」を解き明かすため、ネット副業と呼ばれるものを一つひとつ整理していきましょう。次の図をご覧ください。

これは世の中の「ネットで稼ぐ」を、私なりに整理したものです。上下の軸は、「技術力」の高い/低いです。左右の軸は、左が「マッチングモデル」、右が「アテンションモデル」がメインのものです。

左下にある「せどり/転売ヤー」は、安く「商品」を仕入れて、高値で売りさばく人たちです。有名なのは、ブックオフ で100円で仕入れた本を、アマゾンで高く売るパターンです。

PCの時代はヤフオクでしたが、最近はスマホで売り買いできるメルカリ、チケットならチケットキャンプといったように、一般消費者同士の間で取引する「C to C」のプラットフォームが充実しています。より手軽になった一方で、技術はさほど必要のないため、参入する人が多く競争も激しくなるため、あまり儲かる領域ではありません。

左上の「クラウドワーカー」は、ランサーズクラウドワークス、さらにスキル系のココナラタイムチケットなど、自分の「労働力」を売る人たちです。プラットフォームに個人の評価が蓄積するため、エンジニアやデザイナーなど高い技術力を持った人のなかには、クラウドソーシングを本業として稼ぐ人もいます。

「せどり/転売ヤー」と「クラウドワーカー」が、なぜマッチングモデルなのかを図示すると、次の通りです。

インターネットの登場は「情報技術(IT)」の革命です。ゆえに、そもそもネットには「欲しい人」と「提供できる人」の情報を結びつける(マッチングする)基本原理が存在します。今までは散らばっていた「欲しい人」と「提供できる人」の情報は、ネットが介在することで1つのプラットフォームに集積できるようになりました。だからこそ、「せどり/転売ヤー」や「クラウドワーカー」のように需給をマッチングさせて、ネットで稼ぐ人が出てきました。

「注目」をおカネに換える人々

図の右上に位置するのが「ユーチューバー/インスタグラマー」です。それぞれSNSのユーチューブ、インスタグラムで、たくさんのフォロワーを持つユーザーが注目(アテンション)されて影響力を持つようになり、主に「広告」で稼ぐようになりました。

同じSNSでも、なぜmixi(ミクシィ)やフェイスブックでは「ネットで稼ぐ」人がほとんど出なかったのか? 理由は単純です。「フォロー」がなかった、もしくは機能しなかったからです。「フォロー」というのは、一方的につながることを意味します。ゆえに、その構造はネットワーク科学でいうところの「スケールフリーネットワーク」になります(詳しい解説は「さよならクックパッド」を参照)。ユーチューブは「動画サイト」と分類されてしまうため、SNSと呼ぶことに違和感を持つ人もいると思いますが、ネットワークの構造で見ればSNSです。イメージ図にすると次の通りです。

A/B/C/D/E/Fは全員Sをフォローしているので、Sが発信する文字や写真/動画などの情報が届きます。一方、SはEのことしかフォローしていないため、E以外の残りの人たちが何を発信しているのかをSは知りません(情報の非対称性)。つまり、Sはフォロワーが多く、発信力が高いので「インフルエンサー(影響力を持つ人)」と呼ばれるようになります。

右下に位置するツイッターでフォロワー数の多い「ツイッタラー」を別枠にしたのは、動画を撮影して編集する「ユーチューバー」や、いいね!されるステキな写真を撮る「インスタグラマー」よりも、140字の文章を投稿する方が技術的にもラクだからです。

また「ツイッタラー」だけの影響力で「ネットで稼ぐ」を実現できている人は多くいません。インフルエンサーは「広告」で稼ぐため、文字が主体のツイッターよりも、動画や写真が主体のユーチューブやインスタグラムの方が相性がいいからです。現実世界で文字だけの広告が「新聞の3行広告」ぐらいしか存在しないのと理由は同じです。動画や写真などのイメージがともなうことで、初めて「広告」は機能します。

なぜ人はブロガーを目指すのか?

しかし、「ツイッタラー」のなかには「ネットで稼ぐ」人もたくさんいます。代表的なのが「ブロガー」からネット有名人になり、ツイッターで多くのフォロワーを獲得するケースです(そもそも現実世界で有名な芸能人やスポーツ選手は考慮しません)。

「ネットで稼ぐ」という視点から考えれば、ブロガーが最強です。ブロガーはブログが多く見られるほど、グーグルのアドセンスなどの仕組みを利用してバナー/テキスト広告を表示させることができるため、「広告」で稼げます。有名ブロガーのなかには、より利幅の大きい、広告主と直接契約する「純広告」を掲載する人もいます。一方、インスタグラムやツイッターなどのSNSは、そもそも閲覧数に応じた広告収益をインフルエンサーに配分する仕組みがありません。その点、ブロガーは自分の媒体なので有利です。

「せどり/転売ヤー」と同じように、ブログで「商品」を紹介すると、その販売数に応じて広告主から手数料を受け取れます(アフィリエイト)。広い意味でアフィリエイトも「広告」ですが、読者の興味関心とブログ記事の内容を一致させる(マッチング)ことで収益が増えるため、ここでは「商品」に分類します。

さらにブロガーは書くこと自体を、そのままメルマガや「note」などで「販売」することができます。さらに本を書く人もいます。現在ではその進化形として、動画とミックスさせたniconicoの「ブロマガ」、月額を支払う人しか参加できないクローズド・コミュニティへのアクセス権を販売する「オンラインサロン」など、新たな形態が登場しています。これらも「アテンションモデル」の一形態です。

ブロガーが「労働力」を売るケースは少ないですが、講演やWebコンサルティングで稼ぐ人もなかにはいるので、ゼロではありません。先ほどの図を再掲しましょう。

すべてのネット副業の中心に位置するブロガーは、「広告/商品/販売/労働力」など「ネットで稼ぐ」を網羅的に体現する存在です。ブロガーになるための技術的な敷居もそれほど高くない。またミニブログとも呼ばれるツイッターが登場したことで、ビジネスはさらにメルマガやオンラインサロンにまで拡張しています。ゆえに、ブロガーは「ネットで稼ぐ」の最強プレイヤーです。

さらに、稼ぐだけではありません。世の中にブロガーを目指す人が多い理由には、「ネット有名人になればチヤホヤされるかも」と、ほどよくアテンションモデルがブレンドされていることも重要です。「注目されたい」と思うのは、人間の自然な欲求です。

ネットで稼げて、チヤホヤされる。こんなにすばらしい職業はありません。だからこそ、人はブロガーを目指すのです。

ブロガーを目指さないほうがいい2つの理由

結論が「ブロガー目指そう!」ならば「幸せな結末」です。今夜君は僕のものです。しかし、残念ながら、今からブロガーを目指すのは無理ゲー(クリアするのが無理なゲーム)です。以前の「さよならクックパッド」でも「誰もがヒカキンにはなれない」と書きましたが、ブロガーもまったく同じです。

各方面からの反発必至の予感ですが、ブロガーを目指さないほうがいい理由を2つだけ述べます。

  1.  ニュースネットワークの登場
  2.  ネットの本質は「先物買い」

1. ニュースネットワークの登場

人はどうやってブログにたどりつくのでしょうか? ざっくりと図にすると、次のようになります。

現時点(2017年11月現在)のブログへのアクセスは、主に検索エンジンかSNSの2つです。つまり、何かしらのキーワードをユーザーが検索してたどりつくか、SNSで誰かがシェアした記事を暇つぶしに見ていたユーザーがたまたま目にしてたどりつくかの、ほぼ2択という意味です。まとめサイトに載る、ブックマークをしている、メールやLINEで送られてくるなどのケースがありますが、考えなくてもいいぐらい少ないです。また、むかしは「RSS(アールエスエス)」というブログなどウェブサイトの更新情報を配信する文書フォーマットがありましたが、今はほとんど使われていません。

ブロガーにとって喫緊の問題は、スマートニュースグノシーなど、スマホに最適化されたキュレーションサービス「ニュースアプリ」の存在です。noteはてなブログライブドアブログなど一部のブログサービスは、ニュースアプリにも配信網を持っています。しかしながら、ニュースとしてアプリに配信されるブログ記事はそもそもひと握りです。もしブログ記事が運良くニュースとして配信されても、Webメディアのニュース記事と正面から競合します。

状況はさらに悪くなっています。以前「欅坂46で学ぶアイドルビジネス」の記事の最後に、「ネットメディアやニュースキュレーションアプリという増幅装置を介して、SNSとマスメディアが蜜月を築き上げている」と書きましたが、つまりこれはブロガーにとっての危機的状況です。なぜなら、PCからスマホの時代になり、ユーザーが受動的にSNSやニュースアプリと向き合い時間がとられるほど、マスメディアとWebメディアが結託して拡散する記事と競わなければならなくなったからです。

ニュースはネットワーク化され、そのチカラを強めているのが現状です。その意味でも、この記事が配信されるタイミングでサイト開始からちょうど1か月のKOMUGIが、SNSの拡散力で約20万ページビューに達したのは奇跡としか思えません。すでにツイッターのフォロワーを大量に抱えている古参ブロガーならばまだしも、新参ブロガーにとっては苦難の時代です。

2. ネットの本質は「先物買い」

SNSやニュースアプリがダメでも、検索エンジンで上位に表示されれば大丈夫。本当にそうでしょうか? 検索エンジンは、人があるキーワードを検索して、その興味関心に応じてサイトへの誘導を最適化するサービスです。ブロガーやWebメディアの視点で見れば、検索上位に表示されることが死活問題であり、その勝敗を分かつものを一言で表現すると「キーワードの取り合い」です。

ブロガーを志す人ならば『ブログ飯』を読んでない人はいないと思います。著者の染谷昌利さんが書かれている通り、当時は「Xperia(エクスペリア)」というキーワードで発信してる競合サイトがなく、またAndroid(アンドロイド)のスマホが目新しかったからこそ「Xperia非公式マニュアル」できちんと稼げました。

今はどうでしょうか? ブロガーやWebメディアが競い合うように「これからトレンドになるキーワードは何か?」を探し、検索エンジンの上位に表示されることにしのぎを削っています。キーワード戦国時代の到来です「まだ仮想通貨持ってないの?」(2017年11月現在)と巧みに大衆を挑発し、「仮想通貨」というキーワードを勇気を持って「先物買い」できるぐらいの華麗さがなければ、ブロガーとして生き残っていけません。

この話は、以前「さよならクックパッド」で書いた「後追いが不利なネットワークの特性」とまったく同じ構造です。なぜなら、グーグルのウェブページの重要度を決定するためのアルゴリズム「ページランク(Pagerank)」も、そもそもリンクで張り巡らされたWebサイト間のネットワークを「被リンクが集まったサイトは価値が高い」と解釈することから始まっているからです(ただしページランクのスコアリングは2013年に停止)。つまり、Webサイト同士のリンク構造もネットワークの1種なのです。

現在のグーグルが持つ検索のアルゴリズムがどうなっているかは非公開でわかりません。しかし、発信を始めてばかりのブロガーより、そもそも配信記事数やSNSシェア数が多く、何年も継続しているWebメディアの方が有利であろうことは容易に想像できます。今からWebメディアと「iPhone X」の記事の優劣を競い合っても、新参ブロガーが勝てる余地はほとんど残っていません。

ユーチューバーの次に来るもの

彼「じゃあ、どうすれば……」

私「わかりました。考えてみます!」

と元気よく返事したものの、ずっと「ブロガーやユーチューバーに次に来るものって何だろう?」と考えてました。最近になり、ようやく「これかもしれない!」というものに出会いました。ツイッターでたまたまフォローしていたアイドル活動をしている常盤ゆいさんのツイートです。

「ん!?この毎朝7時のSHOWROOMって何だっけ? どこかで見たような……」そう思った私はすぐに調べて思い出しました。私が大好きな欅坂46が配信を始めたライブ配信プラットフォームが「SHOWROOM(ショールーム)」でした。「はあちゅうさんも配信してる! これに間違いない!」と確信しました。

2013年の11月にスタートしたSHOWROOMは、仮想ライブ空間を「生配信」で観ることができるアプリです。ユーザーは生配信を見ながら、有料/無料の「バーチャルアイテム」を贈る(ギフティング)ことができ、配信者(演者)はそれで収入を得ることが可能です。

(出典:「SHOWROOMのWantedly」

DeNAからスピンオフした事業で、サービスが誕生した経緯については創業者の前田裕二さんが本(『人生の勝算』)やITmediaなどのインタビューに詳しくかかれているので省略します。1つだけポイントを挙げるなら、幼少期にギター1本でおカネを稼いでいた経験がSHOWROOMの「投げ銭」ビジネスにつながっている、というところが面白いです。

官報を見るとまだ赤字が続いているようですが、Social Game InfoによるとAnroidアプリ版がGoogle Playの売上ランキング(全体)で初のTOP30入りを果たすなど、売上は伸びてきているようです。また、BUSINESS INSIDER JAPANによれば、ユーザーの登録数は150万人弱、配信者もすでに約20万人となり月1000万円を売り上げる人もいるとのこと。まだまだ大きくなりそうです。SHOWROOMの配信で大金を稼ぐ「ショールーマー(SHOWROOMER)の時代」という大波を予感させてくれます。

なぜSHOWROOMの「課金(マネタイズ)」がうまくいくだろうと私が直感したのか? 詳しい解説をするとさすがに長いので、要点を2つにまとめて、消耗するブロガーのみなさまへのご挨拶に代えさせていただきます。

  1.  課金ロジックが新世代っぽい
  2.  「承認欲求」からの脱却

1. 課金ロジックが新世代っぽい

SHOWROOMの課金方法について、前田裕二さんの著書『人生の勝算』では、次のように書かれています。

動画を無料で見るとき、広告を強制的に見せられることがあると思います。その広告を外すには、お金を払わないといけない。もともと制限がないところに、運営側が制限をかけて、「この制限を外したいのなら課金してください」というやり方です。(中略)

そのときのユーザーの気持ちの大半は、「何でこんな邪魔な広告をつけるんだろう」といった、ネガティブなものだと思います。このときのユーザーの課金態度を指して、「後ろ向き」と呼んでいます。(中略)

しかし、インターネットが発達し、検索すれば大体無料でコンテンツを楽しめてしまう時代において、そうした課金をユーザーに求めるのは、どこかでビジネス的に歪みが生じると思うのです。

今の時代に沿ったコンテンツ課金のモデルは、払うかどうかの判断をあえてユーザーに委ねる、前向きな課金だと思っています。(中略、SHOWROOMも)無料で視聴も参加もできるため、有料でギフティングをするかどうかは、視聴者の自由です。

(一部省略、太字は筆者)

正論すぎて、ぐうの音も出ません。機能に制限をかけることで課金するクックパッドや食べログ、niconicoのプレミアム会員モデルに対する強烈なアンチテーゼです。そして「前向きな課金=ギフティング」は、とても今どきの課金方法だと私は感じました。次のグラフをご覧ください。

この棒グラフは1本1本がユーザーで、タテの軸が課金額をイメージしています。たとえばスマホゲームならば、いちばん左の棒は「月に1,000万円をつかう廃課金ユーザー」です。右にいくと「0円の無課金ユーザー」がいます。クラウドファンディングならば、左が「100万円で講演に呼ぶ」であり、右が「500円でお礼メール」です。

悪く言えば「搾取」かもしれませんが、見方を変えれば「おカネを取れる人から無理なく取る」とても合理的な課金モデルです。前田さんもアプリマーケティング研究所のインタビューに「中国のとあるギフティングサービスの数字を見ても、年商300億円ちょいで、ユーザー課金率が2〜3%、ARPPUが7,000〜8,000円でした」と答えていますが、おそらくは上記のような「価格の2極化」を自覚的にコントロールされているのだと思います。

2. 「承認欲求」からの脱却

「SHOWROOMはイケる!」と話すと、「投げ銭モデルはうまくいかない。過去に失敗例がたくさんあるじゃないか」とよく反論されます。たしかに過去には、ソーシャルパトロンプラットフォーム「Grow!」が約5,000万円の資金調達をして華々しくデビューしながら、うまくいかなかった実例はあります。

しかし、ビジネスモデルを「◯◯◯モデル」と分類して、あるレッテルを貼ってしまうと「完全に見誤る」ことが多いので気をつけてください。大局的な分析には有効かもしれませんが、すべてに適用しようとすると害が大きいです。ギフティング(投げ銭)は基本原理を間違えなければきちんと機能します。

同じように、「承認欲求」という言葉を軽々しく使うのも絶対にやめたほうがいいです。「人間の承認欲求は課金できるはずだ」という曖昧な仮説でサービスをつくってしまうと失敗します。トークアプリ「755(ナナゴーゴー)」やアイドル応援アプリ「CHEERZ(チアーズ)」がどういう経緯で始まったかは調べてませんが、もし「承認欲求に課金できるはず」と考えているなら、マネタイズ方法に苦しむことになるでしょう(まだまだこれからですね)。

では、ギフティング(投げ銭)の基本原理は何か? 気をつけるべきはフィードバックの「スピード」「量」2つです。

5年半以上前に「楽天レシピはなぜクックパッドに勝てないのか?」という記事を書いたとき、ゲームの基本的な構造は「プレイ&フィードバック」のループ構造になっていると説明しました。そしてスマホの時代になった今、あらゆる製品/サービスにとって重要なのは、ユーザーがアクション(行動)したことに対して、いかに早くフィードバックを返すかです。

ツイッターはなぜタイムラインの表示を「時系列順」から「アルゴリズム」に変えたのか、みなさんは深く考えたことはありますか? それが答えです。

SNSとしてツイッターが競合するのはフェイスブックですが、もともとフェイスブックのニュースフィードはアルゴリズムによって自動的に調整されていました。つまり、ユーザーが投稿したことに対して、いち早く「いいね!」がつくようになっています。「いいね!」(フィードバック)がつく「スピード」が早いと、ユーザーは「投稿」という行動の動機づけが強くなります。つまり、ツイッターではなくフェイスブックを使うようになります。それに焦ったツイッターが、タイムラインの表示を「時系列順」から「アルゴリズム」に変えたのです。

スピードの次に大事なのが、フィードバックの「量」です。フェイスブックは、スピードだけではなく「いいね!」がよりたくさんつくように、ボタンを押しそうな人に対して投稿を優先的に表示させます。つまり、フィードバックの量が多いと、ユーザーは「投稿」という行動の動機づけが強くなるのです。

フィードバックの「スピード」と「量」。この2つの基本原理を理解してから、SHOWROOMのギフティング(投げ銭)を試してみてください。生配信(リアルタイム)であるSHOWROOMのフィードバックスピードは秒単位です。あるAKB48のメンバーの配信を見ていたら、次々とギフトの1つである「東京タワー(10000G=10000円)」が投げられていました……。3秒後には「◯◯◯さん、ありがとうございます!」とお礼を言うメンバー。このスピード感はやめられません。

先ほど例に出した「755」でも、AKB48のメンバーから「コメントありがとう!」と返信やスタンプが(たぶん)届きます。でも、3秒後に返ってくるのは無理です。さらにフィードバックの「量」という視点から考えましょう。ここでいう「量」は先ほどの「いいね!」の数とは違います。フィードバックの「情報量」です。ステキな笑顔と声で「ありがとう〜♪」と直接に言われるのと、文字やスタンプで「ありがとう!」と返ってくるのでは、ファンはどちらがうれしいでしょうか? きっと直接に言われたほうが喜びが大きいはずです。「情報量」に置き換えても、MB(メガバイト)の動画か、KB(キロバイト)の文字やスタンプか、という話です。

以上のフィードバックの「スピード」と「量」という2つの基本原理から、SHOWROOMは「ネットで稼ぐ」プラットフォームになるだろう、と私は考えているのです(注意:ただし配信者へのレベニューシェア率は非公開。めっちゃ低かったらごめんなさい)。

SHOWROOMのライバル登場

「SHOWROOMの圧勝!」と言いたいところですが、ひさびさに「One more thing(ワン・モア・シング)」です。ライブ配信アプリはSHOWROOM以外にもたくさんあります。日本では「ツイキャス」「LINE LIVE」が有名ですが、この2つはコミュニケーションにフォーカスしており設計思想がそもそも違うので、おそらくSHOWROOMのライバルにはなりません(解説の機会があれば書きます)。

しかし、アジア方面のライブ配信アプリをたくさん触るなかで、SHOWROOMの強力なライバルに出会ってしまいました。台湾で生まれ、中華圏随一ともいわれるライブ配信アプリ「17 Live(イチナナライブ/17直播)」です。THE BRIDGEの記事によると2017年9月に日本法人を設立してばかりです。世界で3,000万ダウンロードとSHOWROOMの約20倍、毎月3万人がライブ配信を行っているそうです(ただし2017年に中国ではBANされました)。単純計算で1日あたり1,000人がライブ配信をしてます。

17 Liveを提供する「17 Media」創業者の黃立成(Jeffrey Huang)氏は、台湾文化にヒップホップをもたらしたラップグループの1人で、芸能事務所社長からデジタル業界へ転身した経歴の持ち主です。前田さんと同じようにストーリーがありますね。2017年の営業収入は2億米ドル(約225億円)に達する見込みとのこと。2017年8月にはシリーズ A ラウンドで Infinity Venture Partners などから4,000万米ドル(約45億円)を調達しました。調達額からも相当に期待されていることが伺えます。

そもそもSHOWROOM自体が中国のライブ配信サービス「YY LIVE」を模してつくられたことは、インタビューで前田さんが語っている通りですが、YYをしのぐ勢いで急成長を遂げているのが17 Liveです。Wantedlyの会社情報から引用します。

(日本にも)競合と言える企業は何社かあるのですが、ある企業では、アイドルメインのライブ配信プラットフォームを運営しています。アイドルに強みを持っているため一般ユーザーのライバーがチャレンジすることが難しいのです。17 Mediaは誰でもライブを配信をすることができるので、そこが違いです。

(太字は筆者)

SHOWROOMはアイドルのイメージが強すぎるため、ユーチューバーなど他のクリエイターが入りにくくなっています。さらにソニー・ミュージックエンタテインメントの資本が入っているため、他事務所のアーティストも参加しにくい。17 Liveはまさに急所を突いてます。……っていうか、この会社情報を書いたのは日本法人代表の小野裕史さんなのでしょうか。解説がいちいち的確です。

こうしたメッセージを読むと、17 LiveがSHOWROOMの最大のライバルになりそうなことを予感させてくれます。前回の「がんばれ僕らのアベマTV」での考察をふまえると、AbemaTVにとってもライバルといえるのかもしれません。

協力のSHOWROOM vs. 競争の17 Live

今回のテーマは2回に分けて書けばよかったなと反省しています。長くなってすいません。最後に、SHOWROOMと17 Liveの「設計思想の違い」について、1点だけ指摘して終わろうと思います。画面の比較をご覧ください。

(出典:左「SHOWROOM – iTunes」、右「17Media JapanのWantedly」

SHOWROOMの特徴は、観客のアバターが画面の半分を占める独特な構成です。一方で、17 Liveは配信者の存在を最大限に感じさせるようなインターフェイスで、YYやLive.meなどグローバルで展開するライブ配信プラットフォームの標準ともいえる画面構成です。

SHOWROOMのこの独特なデザインについて、前田さんは著書『人生の勝算』で次のように書いてます。

配信ルームに入ると、演者側の動画部分よりも、視聴者がアバターで並ぶ観客席側のスペースの方が大きく設計されています。本来は皆、演者のことが見たくて集まっているわけですから、これはある意味でユーザー心理の逆をついており、勇気のいるユーザーインターフェイスかなと思います。

しかし僕は、本来脇役であるアバターの反応や動き自体が、SHOWROOMの独自性であり、面白さだと思っています。(中略)

ひとたび、コンテンツと観客の間に会話が生まれると、元のコンテンツの持つ価値が拡張され、同じ空間にいる人同志の関係性や動き、発言など、あらゆる要素が相互に影響し合って、それ自体がコンテンツになっていきます。

この「観客のリアクションを含めてコンテンツだ」というアイデアは、実はニコニコ動画の発想と同じです。ニコニコ動画が独自の文化を生み出した最大の理由は、コメントによって画面が埋め尽くされる「弾幕」をはじめ、ユーザーのツッコミがいちいち面白いからです。「観客のリアクションを含めてコンテンツだ」という日本的インターフェイスを継承したSHOWROOMは、ある意味でニコニコ動画の後継者です

SHOWROOMと17 Liveの画面構成の違いは、ユーザーの行動にどう影響するのか? 私はこの違いを「協力のゲーム」「競争のゲーム」という2つの軸で説明したいと思います。

SHOWROOMは「協力のゲーム」です。アイドルがライブ配信しているとき、ファンであるユーザー同士が協力をし合います。たとえば、ライブにおいてこのメンバーのペンライトは何色かが決まっているように、このアイドルのライブ配信のときにはダルマをギフティングしよう、などの暗黙のルールがファン同士で生成されます。また決まったアバターを着るなどのいわゆる「ヲタ芸」が生まれるのです。「協力のゲーム」を機能させることで得られる最大の効果は、ユーザーの継続率を上げるリテンションです。

17 Liveは「競争のゲーム」です。アイドルがライブ配信しているとき、ファン同士はいかに配信者の注意を引くか、レスポンスをもらえるかを競い合います。たとえば、ライブにおいてジャニオタがうちわを持ってレスを狙うように、ライブ配信者が誕生日であればより高いギフトを競うようにプレゼントします。配信者の映る面積が広く表情という情報量のフィードバックも大きいです。「競争のゲーム」を機能させることで得られる最大の効果は、ユーザーの課金率を上げるコンバージョンです。

より詳しいインターフェイスの解説は別の機会に書きますが、ざっくりと設計思想を比較するとこのようになります。今回のテーマである「ネットで稼ぐ」という意味では、もし17 Liveの日本でのユーザー数がSHOWROOMと同等ならば、17 Liveに軍配が上がるかもしれません。しかし、ライブ配信で「独自の文化をつくる」のはSHOWROOMでしょう。またもやビジネスの名勝負になりそうな予感です。

みなさんなら、SHOWROOMと17 Liveのどちらを「先物買い」しますか?

まとめ

「ネットで稼ぐ」をテーマにして書き始めたのに、SHOWROOMが面白すぎてテーマがずれまくりました(笑)。長くなり毎度すいません。一言でまとめると「ネットで稼ぐ」には「先物買い」が必須ですよ、というのが今回のメッセージです。

ブロガーもツイッタラーもユーチューバーも全部そうでしたが、SHOWROOMのショールーマーも17 Liveのライバーも先に参入した人が優位に立ちます。ネットで稼ぎたいみなさん、がんばってくださいね! そしてKOMUGIの「相談する」に「ネットで稼ぐにはどうしたらいいですか?」という悩みで応募しないでくださいね! ダメ。ゼッタイ。

……と冗談っぽく書いたものの、真剣に相談に来ていただいている8割の方々は「具体的なプロダクト(サービス・製品・企画)」をお持ちいただいてます。すばらしいプロダクトがたくさんあり、本当に勉強になっています。ありがとうございます。

すでに40件を超えるビジネスのご相談をいただいており、私一人ではさばけない可能性が高くなってきました。なので近々、KOMUGIは「個人」から「チーム」へと編成を変えさせていただく予定です。もともと「編集者のドメインを再定義する」のが本サイトの最大の目的だったので、プロジェクトへの移行は私も望むところです。もちろん記事は継続して執筆いたしますので、引き続きお楽しみください。

ではまた次回。

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