ブロックチェーンの「トラストレス」とは何か?

2018年3月に米国・テキサス州オースティンで開催された「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)」に行ってきました。航空券はオンラインで手配でき、ホテルは海外でもレビューを見ながら選べる便利な時代です。問題は、現地に着いてからの移動手段でした。

電車はなく、バスを乗り継いでホテルへ向かうのは難しそうです。残る手段はタクシーになるのですが、乗るのがちょっとコワい。なぜなら、以前、米国ニューヨーク出張で騙されたことがあるからです。空港から乗ったタクシーがメーターを入れず走り、降ろされたときに法外な料金を請求されました。

そこで配車アプリの登場です。有名な「Uber(ウーバー)」は、オースティンでは台数が少ないらしく、口コミで「Lyft(リフト)」を使うことにしました。これがすごく便利です。

(出典:「Lyft – Google Play の Android アプリ」

アプリをダウンロードして、会員情報と決済のクレジットカードを登録。スマホのGPSで自分のいる位置を伝え、行き先を登録すると、「◯分後に迎えに行きます」と画面上のクルマのアイコンが動き出しました。ホテルに到着したら「サンキュー」と降りるだけ。最後にアプリで表示された金額を承認するだけです。あまりに簡単で感動しました。

この出来事を振り返りながら、思い出したのはSXSWの「ブロックチェーン(Blockchain)」のカンファレンスで繰り返し聞いた「トラストレス(Trustless=信用不要)」という言葉です。

まさに「Lyft」は「トラストレス」です。運転手の名前や評価がアプリ内で一覧でき、初対面だろうが「ほぼ5つ星だし、騙されることはない。大丈夫だろう」と、ためらうことなくサービスを使えます。

しかし、なぜ「ブロックチェーン」で今さら「トラストレス」がキーワードになっているのか、いまいちピンとこない人も多いと思います。私もそうでした。そこで、今回は「トラストレス」の意味について、考察を深めたいと思います。

暗号通貨はハッキングされていない

「ブロックチェーンは一言で、どのような技術か?」と聞かれれば、おそらく私は「取引(Transaction)の信頼性を担保するテクノロジーだ」と答えます。

ビットコインは、2009年5月にサトシ・ナカモトと名乗る人物が論文で暗号通貨の原理を発表したことから始まりましたが、その原理から「ブロックチェーン」の技術コンセプトが生まれました。

「通貨の取引」は、「二重支払い(Double spending)」が起こってはならない極めて厳密なものです。1つでも数字が間違っていれば、大問題になります。暗号通貨を支えるブロックチェーンは、そうした「通貨の取引」を支える画期的な技術です。

「暗号通貨の安全性は低い」と誤解している人も多いようですが、暗号通貨のブロックチェーン自体がハッキングされているわけではありません。暗号通貨は2014年3月にマウントゴックスが約115億円(当時)、2018年1月にコインチェックが約580億円(当時)という多額のハッキング被害にあっていますが、いずれも「取引所」システムの脆弱性を狙われたものです。

下記は「10分でわかるビットコインの本質」という過去記事で掲載した図です。「通貨の取引」に使えるほどの耐性があることから、ブロックチェーンは「取引」の在り方を大きく変えるイノベーションだと期待されているのです。

人材紹介はなぜネット取引に向いてないのか?

そもそも、これまで「取引」のイノベーションにはどのようなものがあったのでしょうか。物々交換から貨幣の誕生以後も、「取引」の信頼性を担保する試みはさまざまに行われています。歴史が古いため、すべてを解説できるわけではありませんが、山岸俊男『ネット評判社会』にある面白い事例を紹介しましょう。

11世紀の地中海貿易において、マグリブ商人という集団がいました。海を越える「取引」は、すべての場所に目を光らせることができないため、彼らはエージェント(代理人)を使って「取引」を行わざるを得ません。

目が行き届かなければ騙されやすいもの。ところが、マグリブ商人は、エージェントを使って大きな利益を上げていました。巧みにエージェントの不正を防いでいたのです。彼らはどのような方法を用いて「取引」の不正を防いだのでしょうか?

エージェント問題を解決するためにマグリブ商人たちは、自分たちの仲間しかエージェントとして雇わない、そして自分を裏切ったエージェントの評判を仲間うちで広め、仲間を裏切ったという評判がまわってきた人間はエージェントとして雇わないという方法を用いていたのである。(太字は筆者)

つまり、過去の取引情報履歴を仲間うちで共有することで「取引」の信頼性を担保したのです。

エージェントが介在する取引などでは、売り手と買い手の間に「情報の非対称性( Information Asymmetry)」と呼ばれる情報格差が存在しています。つまり、エージェントの「質」は、買い手である商人側が「見た目」では商品の判断ができないため、「取引」の信頼性を担保する方法が求められるのです。

「情報の非対称性」というと難しく聞こえますが、たとえば人材紹介業を想像してください。「人材」の質は、当然ながら見た目で判断できません。信頼ある人材派遣会社から「この人は御社にピッタリです」と紹介されないと、本当に質の高い人材かどうか、わからないものです。

クラウドソーシングサービスなどで一部の仕事はネット上のマッチング取引に代替されていますが、そもそも人材は「人」を介さないと取引の信頼性を担保するのが難しい商材です。すべての人材紹介をネットだけにリプレイスするのが難しい理由は、この「情報の非対称性」にあります。

「契約」が信頼性を担保する

マグリブ商人の話には続きがあります。地中海貿易において11世紀の覇権を握ったマグリブ商人ですが、12世紀に入るとジェノヴァ商人たちとの競争に破れてしまいました。なぜでしょうか? 『ネット評判社会』には次のような記述があります。

彼ら(ジェノヴァ商人)がとったのは、法律や裁判所などの制度を整備するというやり方である。マグリブ商人たちがジェノヴァ商人たちのような生き方をとらなかったのは、裁判所や司法制度を整備するためには費用がかかるからである。(太字は筆者)

仲間うちで取引情報履歴を共有するのではなく、「契約(Contract)」で「取引」の信頼性を担保しました。つまり、取引相手であるエージェントに対して「契約と違う」と訴えれば済むようになったのです。

ジェノヴァ商人が法を整備することで、取引相手を仲間うちだけに限定する必要がなくなりました。さまざまな相手と取引ができるようになったため、取引の機会が広がり、貿易が活発に行われるようになったのです。

このとき初めて、マグリブ商人が仲間うちだけに取引を限定していたため、見えない「機会費用(Opportunity Cost)」を払っていることがわかったというわけです。図に整理すると次のようになります。

「ネット取引」の原理

さて、時代をインターネット登場以後の世界に戻しましょう。ネット空間において、「取引」はどのように広がっていったのでしょうか?

「インターネット(Internet)」は、そもそも「間」を意味する「inter」のネットであり、あらゆるものの間をつないできました。世界中の人と人をつないだことは、言うまでもありません。新たな「ネットワーク(Network)」が生まれたことで、可能になったのが、今までにできなかった「取引」です。ネットが登場して20年あまりで、本当にたくさんの「取引」が生まれました。

アマゾン楽天で店舗と消費者が直接につながり(B to C)、会社同士がマッチングし(B to B)、地域や国など「空間」を超えた「取引」が生まれただけではありません。メルカリminneなど消費者同士で行われる「取引」もたくさん登場しました(C to C)

しかし、私たちはどのようにしてネット空間における取引の信頼性を手に入れてきたのでしょうか? あらためて整理してみましょう。まず取引においては、当たり前ですが「(1)売り手」と「(2)買い手」の2つが存在します。ここでは、それぞれについて「取引の信頼性」を考えてみましょう。

(1)「売り手」:クレジットカードを用いる

「売り手」にとって、「買い手との取引の信頼性を担保する」というのは、つまり「買い手」がきちんとお金を払ってくれるかどうかを見極めることです。

インターネットの取引において、この「買い手の信頼性」を保証してくれたのは、実はVISAやMASTERといったクレジットカードです。「クレジットカード(Credit card)」のクレジットは「信用(Credit)」ですので、まさに「買い手の信頼性」を担保してくれる「与信」の仕組みがもともとあったというわけです。

当然のこと、クレジットカードには審査がありますが、日本にはクレジットカード会社が集まってつくった、信用情報を集める組織「CIC(Credit Information Center)」があります。CICは、会社員かどうかなど個人の属性や、支払状況、残債額などの情報を収集しています。こうした情報を基に、加盟店がお金を貸していいのかどうか、いくらまでローンを組んで大丈夫かどうかなどを判断しているのです。

つまり、ネット取引の「売り手」側はクレジットカード会社(決済代行会社)に手数料を支払うことで、口座振込やコンビニ決済など一部を除き、もともと「買い手の信頼性」をそれほど意識することなく取引をすることができました。

(2)「買い手」:レビューを共有する

問題は「買い手」側、つまり私たちです。思い返してみれば、インターネットが登場した当初の1990年代後半から2000年代初期は、大多数の人にとってネットに信用がない時代でした。「ネットでモノを買うのはコワい」と言われていたぐらいです。

どのように「取引の信頼性を担保する」ことができたのでしょうか? 実は、その方法がマグリブ商人と同じように「仲間うち(サイト内)で取引情報の履歴を共有する」という方法だったのです。つまり「レビュー(Review)」などで売り手側(又は商品)の評価がストックされることで、「この売り手は信頼できる」と私たちは安心して取引ができるようになったのです。

冒頭の配車アプリ「Lyft」はわかりやすい例です。買い手には運転手の質がわからず「情報の非対称性」が存在していますが、5つ星のレビューが付いていれば、ひとまず取引の信頼性が担保できます。

レビュー以外にも、「買い手」の確認があるまで、「売り手」に代金が渡らないようにする「エスクロー(Escrow)」などの仕組みが導入されることで、「買い手」側が安心して取引できるようになりました。双方がIDを簡単に変えられない施策なども、不正な取引を減らす仕組みです。

「Pairs(ペアーズ)」のような恋愛・婚活マッチングサービスを考えても面白いでしょう。PC時代には「出会い系サイト=怪しいもの」とされていたサービスが、スマホ時代には「マッチングアプリ=健全な出会い」へと変化しました。「スマホだから」という理由もあると思いますが、「Facebookと連携しているから安心」と取引の信頼性が担保されたことが大きいのではないでしょうか(出会いを取引と呼ぶかはさておき)。

このように「IT(Information Technology=情報技術)」をつかったウェブサービスは、さまざまな方法で「信用」を生み出し、新たな「取引」を増やしてきたのです。(もちろん、安心して取引できるブランド名や純粋想起といった側面もありますが、ここでの言及はあくまで再現可能なメカニクスに限定します)

プラットフォームによる「信用」の寡占

かくしてネット空間には、たくさんのマグリブ商人に似た商圏が誕生しました。特に、別名「シェアリング・エコノミー(Sharing economy)」とも呼ばれる「C to C」では、過去の歴史にはない画期的な取引がたくさん生まれました。

自分の住まいを宿泊施設として貸し出す「Airbnb(エアービーアンドビー)」もその1つでしょう。「民泊(みんぱく)」と呼ばれていますが、「取引」の信頼性を担保することで、ホテルに替わる宿泊の需要をゼロから生み出しています。配車アプリの「Uber」「Lyft」もタクシーに替わる乗車の需要をゼロイチでつくりました。こうした「C to C」の取引があまりにスムーズでうまく成立し、急速に増加したため、法の整備が整う前に普及し、さまざまな摩擦や軋轢を起こしているのは、ニュースでよく目にするとおりです。

問題はそれだけではありません。さまざまな「取引」がゼロイチで新たに生まれているため、特に問題はなさそうに見えますが、大きな課題が1つ生じました。すなわち、ウェブやアプリなどのサービスは、レビューなどで評価がストックされればされるほど「買い手」が集まり、また「買い手」が集まれば集まるほど「売り手」が集まるプラットフォームビジネスです。

ゆえに「ウィーナーテイクオール(Winner-take-all:勝者総取り)」になりやすく、「買い手」や「売り手」といった「取引の主体」以上に、市場を仕切る胴元(プラットフォーム)がパワーを持ちすぎているのです。

たとえば、Amazonや楽天がサービスの品質維持を理由に手数料を値上げしても、そこで「買い手」を集めているショップ(「売り手」)はなかなか他に移りづらい。なぜなら、顧客からの評価やつながりなどの「信用」がサイト内でストックしてしまっているからです。本来は「取引」の主役であるはずの「買い手」や「売り手」がおざなりになりやすいのです。

さらに言えば、「Airbnb」「Uber」「Lyft」をはじめ、予約代行サービスやクラウドソーシングサービスなど、扱う商材の「情報の非対称性」が大きい「取引」ほど、「売り手」の移行は難しくなります。なぜなら、ストックした評判や信用は「取引」において非常に大きな価値を持つからです。ゆえに「ウィーナーテイクオール」がますます進むことになります。

これはブランディングやSEO(検索エンジン最適化)などマーケティングの問題ではありません。いかに利用者の「スイッチング・コスト(Switching cost:切り替え費用)」を高めるか、というプラットフォーム戦略に関わるものになりつつあります。つまり、どのように「取引」のメカニクスをデザインして、いかに「信用」のストックを寡占するかがポイントになっているのです。

こうしたプラットフォームビジネスによる信用のストックは、PCからスマホ時代へとシフトし、顧客の入り口が「検索」から「アプリ」へと移り変わることで固定化し、さらに独占・寡占が顕著になってきています。

「ディセントラリゼーション」の時代へ

そこに登場したのがジェノヴァ商人です。国家による法制度の整備ではありません。すでに述べたように、裁判所や司法制度を整備するためには多額の費用がかかるうえスピードも遅く、ネットやテクノロジーが進化する速度に追いつけません。

時間がかかる法制度の代わりに、21世紀のジェノヴァ商人は「ブロックチェーン」という新たなテクノロジーを引き提げてやってきたのです。ポイントは前回も述べた「ディセントラリゼーション(Decentralization:分散化)」というコンセプトです。

プラットフォーム化するウェブやアプリの胴元(サービス提供者)を「現代のマグリブ商人」にたとえるなら、彼らがストックしている評判の価値をブロックチェーンと呼ばれる仕組みのなかに入れ、ディセントライズ(分散的)に管理しようという試みが始まりました。

2018年のSXSWにも登壇していた「ブロックスタック(BlockStack)」共同創業者のMuneeb Ali氏の話がとても象徴的です。

ブロックスタックは、ディセントラリゼーション時代のインターネットにおける新たなアプリを標榜する注目のサービスです。トークンによる資金調達「ICO(Initial Coin Offering:イニシャル・コイン・オファリング)」で5280万ドル(約60億円)を調達して話題となりました。

彼は「インターネットはFacebookとGoogleのものになってしまった」と嘆きます。そして、1.巨大企業への盲目的な信頼(Blind Trust)2.データの所有権がない(No Ownership)の2つを挙げながら、「インターネットはそもそもオープンなものだったはずだ」「インターネットは透明性があり、フェアな場であるべきだ」と述べています。主張はシンプルで「仲介者はいらない。データは私たち自身が所有すべきだ」というのです。

彼の主張どおりブロックスタックは、ブロックチェーン技術を用いて、ユーザー自身がデジタル上の「ID(Identity:アイデンティティ)」を管理できるシステムをつくっています。また、さまざまなディセントライズ(分散的)なアプリをつくっています。中国のアリペイが信用を「芝麻信用(Zhima Credit)」で中央集権的に管理するのとは真逆です。

ちなみに、ディセントラリゼーションの考えに基づいてつくられるアプリは「DApps(Decentralized Applications:ディーアップス)」と呼ばれます。2018年のSXSWでもいくつかDAppsのセッションがあり、私も参加してきました。

サトシ・ナカモトは、なぜ「信用」の再発明を求めたのか?

こうした「取引」における信頼性の担保や、ネット取引におけるプラットフォームの問題など、一連の流れがわかることで、ようやくSXSWのカンファレンスで繰り返し聞いた「ブロックチェーン」文脈における「トラストレス」の意味が理解できるようになります。

プラットフォームの登場で、たしかに「トラストレス」な「取引」は実現しました。しかし、それは人々が登場に熱狂した1990年代に目指した「理想のインターネット」の姿ではありません。中央集権的な巨大IT企業が築くプラットフォームのうえでしか実現していないのです。

つまり、「トラストレス(信用不要)」とは、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)やUber・Airbnbといった中央集権的な巨大IT企業によるプラットフォームを介することなく、ディセントライズな「ブロックチェーン」を機能させることで、ユーザー間の「取引」における信頼性の担保することができる状況を指しているのです。

サトシ・ナカモトのビットコイン論文では、次のような記述があります。

必要とされているのは、「信頼」の代わりに「暗号」により証明される「電子決済システム」であり、「信頼できる第三者機関」を必要とすることなく、自発的な当事者間で直接に取引が行われるようにすることである。

What is needed is an electronic payment system based on cryptographic proof instead of trust, allowing any two willing parties to transact directly with each other without the need for a trusted third party.

ブロックスタックのMuneeb Ali氏と同じように、ビットコインは仲介者なしに、いかにユーザー同士の直接取引を実現できるかを目指しています。そのビットコインから生まれた新たなコンセプト技術が「ブロックチェーン」です。

さらに「スマートコントラクト」と呼ばれるプログラムを擬似契約として機能させることで、「買い手」と「売り手」の取引の信頼性を担保します。こうした一連の仕組みが「革命的だ」と評されるのです。

「インターネット」から「インターチェーン」へ

ブロックチェーンにより、ネット取引のディセントラリゼーションが実現したとき、どのような世界が広がっているのでしょうか? 概念的に言えば、スイッチングコストが低下するため、あらゆる取引の機会が広がることが想定されます。

たとえば、「YouTube」というプラットフォームで活躍するYouTuber(ユーチューバー)は、チャンネル登録をしてくれているファンがそこにストックしているので、なかなか別のプラットフォームへ移籍することはできません。「note」でフォロワーを獲得している書き手も同じです。しかし、ディセントライズの世界では、アイデンティティや評価のストックがブロックチェーン上にあるので、移行がしやすくなります。デジタル世界における「プラットフォーム寡占のリスク」が1つ減るため、安心して会社ではなくクラウドソーシングサービスで働き始める人も出るでしょう。

私は、世界中の人が「ネットではなくチェーンでつながる」というところにポイントがあるような気がしています。つまり、「インターネット(Internet)」ではなく「インターチェーン(Interchain)」と呼ぶべき概念から、イメージを逆算すると面白いと思います。同じ思考実験をしている記事がありましたが、「検索」ではなく「取引(トランザクション)」で、「ハイパーリンク(Hyperlink)」ではなく「チェーンリンク(Chainlink)」でつながると、世界はどう変わるかを考えるのがいいと思います。

間違いなく言えることは、トラストレスな仕組みが広がることで、これからデジタル空間において「トランザクション」が劇的に増える時代がやってくる、ということです。「インターチェーン」の時代に、起こりうる主な変化を3つにまとめると下記になります。

1.人間は「思考」ではなく「行動」へ

2.つながりは「数」ではなくの「深さ」へ

3.価値は「信用」ではなく「信頼」へ

わかりやすく説明できるほど自分のアタマのなかを整理できていませんが、直感的に浮かんだ概念に言葉を与えるとしたら、この3つに集約されると思いました。

シンギュラリティ大学のリース・ジョーンズが講演で「ブロックチェーン」を遺伝子の進化にたとえて、「これからカンブリア爆発が起こる」と述べていましたが、言い得て妙だと思います。デジタルの世界において、多種多様なサービスが共存する生態系が出現するのだとすれば、それはとても面白い時代になるでしょう。

なお、以前「メディアビジネスは今すぐやめましょう」で「Webメディアの未来は暗い」というニュアンスで語ってしまったことがあります。しかしながら、Webメディアのように一定の価値を共有する「雑誌的コミュニティ」のつながり・関係は、ブロックチェーンと非常に相性の良いものです。ブロックチェーンの登場で、以前の記述は一部間違っていたと気づきました。本稿でお詫びして訂正します。

まとめ

今回は、米国SXSWで繰り返し語られた「トラストレス」というキーワードについて、「ブロックチェーン」の文脈から、その意味を読み解きました。

最初に「取引」の信頼性を担保する仕組みの歴史をマグリブ商人とジェノヴァ商人の比較から述べ、またネット取引における売り手と買い手の信頼性の違いを考えました。次に、プラットフォームによる「信用」の寡占という問題を指摘し、ディセントラリゼーションの意味について解説しました。最後に「インターチェーン」という概念からイメージを広げ、起こりうる変化をキーワードにしました。いかがでしたでしょうか?

まさか「トラストレス」の意味を考えるだけで、これほど長い記事になるとは思っておらず、いつもながら恐れ入ります…。「信用のストック」や「取引のメカニクス」という定量化・言語化しづらい価値を扱うことが、ブロックチェーンにおいては極めて重要だと感じたため、まとめてみた次第です。ほぼ個人的な「メモ書き」だと思っていただけると幸いです。

次は、暗号通貨やブロックチェーンがもたらす「トークン」の可能性について、もっと深めて考えたいと思っています。ご興味あれば、引き続きフォローください。また、KOMUGIとは直接に関係ありませんが、編集を担当した伊藤穰一さん『教養としてのテクノロジー』の感想などをSNSを通じてフィードバックいただけるとうれしいです。

では、また次回。

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