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コンデナスト・ジャパン「WIRED SZ メンバーシップ」に寄稿

いまだ正しい定義が存在しないDAO、その全体像とよくある誤解:SZ Newsletter VOL.193[DAO]

7月WEEK#1のテーマは[DAO]。Web3リサーチャーのcomugiが上梓した新刊『デジタルテクノロジー図鑑』から、DAOの真髄を渾身の図解とともに紹介する5回連載の読みどころを編集長の松島倫明が読み解くニュースレター。ポッドキャスト配信より早く、SZメンバーに1週間のハイライトをお届けする。

──みなさん、こんにちは。SNEAK PEEKS at SZ MEMBERSHIPでは、SZ会員向けに公開した記事のなかから、注目のストーリーを編集長の松島が読み解いていきます。今回は2023年7月WEEK#1のテーマである「DAO」についてで、ゲストはWeb3リサーチャーのcomugiさんです。よろしくお願いします。

comugi&松島:よろしくお願いします。

──ゲストのcomugiさんは、ビジネス書の編集者やグローバルWebメディアの日本版の編集長を経て、現在はシンガポールを拠点とするWeb3ファンド「Emoote(エムート)」の共同創業者でいらっしゃいます。WIREDのWeb3特集のキーストーン企画となる「“クリプト”をめぐる4つの概念図」の解説のほか、Web3用語集のご執筆にもご協力いただいていますが、7月に新著『デジタルテクノロジー図鑑:「次の世界」をつくる』を上梓されていて、今週の記事は新著のDAOパートをSZメンバー向けに特別編集していただいた内容になっています。

comugi:本書はWeb3特集をきっかけに動き出した企画で、仮想通貨やgenerative AIのような80項目のデジタルテクノロジーを図解とともに紹介しています。インターネットの初期からWeb3領域まで、どんなつながりのなかで各キーワードが出てきたのか、それぞれのコンテクストを紡ぎながら一つひとつ噛み砕いて説明しています。

今週の記事:DAOを最もシンプルに理解する、3つのポイント:集中講義「DAOとは何か?」

松島:comugiさんは、以前から図解コンテンツが得意で、自身のTwitterでも度々シェアしてきましたよね。今回はこの本のために、新たに図を描き起こしたんですか?

comugi:そうですね。原案のスライドは200枚ぐらいあって、かなりの労力をかけました(笑)。

──200枚ですか! 新著を拝見させていただくと、例えば、お金の流れ(経済)やビジネス(仕事)、組織、社会(国家)を変えるテクノロジーなどの章があります。そのなかでSZ向けにDAOの項目をセレクトいただいたのはなぜですか?

comugi:第5章の「社会(国家)を変えるテクノロジー」は本書のクライマックスにあたる部分で、DAOパートは結構難しい内容になっているんです。でも、すでにWeb3特集で背景にあるコンテクストを共有しているWIRED読者だからこそ、価値をもつパートだと感じました。

月曜日の記事も「DAO(自律分散型組織)に定義はない」という話からスタートしているように、国内外を見てもひとつとして正しいと言われている論がないんです。さまざまな意見があるなか、ぼくが依拠したのはイーサリアムの共同創業者であるヴィタリック・ブテリンのブログでした。これもまた哲学的で難解なんですが、それを咀嚼のうえ超訳し、いちばん理解しやすくパッケージングしたかたちになります。

関連記事:イーサリアムを生んだ23歳の天才が語る、ブロックチェーンのこれからと「分散の力」

松島:ブテリンのブログをもとに、comugiさんがDAOの要件を簡潔に3つにまとめてくれているわけですが、さらにDAOのタイプについても、発行トークン別、つまりFT(ファンジブルトークン)とNFTという2つのトークンをどのように使っているかを踏まえ、4つに分けている点が抜群にわかりやすかったです。

comugi:この整理の仕方は、完全なオリジナルなんです。DAOを本質的に理解するにはどこに着目すべきかを考えた際に、ぼくは内部資本(インナーキャピタル)をいかにガバナンスしていくかだと思いました。その構成要素がトークンだと感じたからこそ、まず、世界中にあるDAOと呼ばれてるプロジェクトのトークノミクスを見ていったんです。で、この4つのタイプに分けられると気づきました。

DAOは目的別に分類されることが多いんですが、それだと極めてわかりにくい。例えば株式会社の目的は「利益」ですが、何を目指すDAOかは無限にあると考えられますし、リサーチャーとして目的別の分類は不可能だと感じていたのです。

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